ものづくりの系譜
「やらまいか」の風土が育んだ、産業のまち
自動車・楽器・工作機械・電子機器などのグルーバル企業を輩出してきた、遠州地域。その産業のルーツは、江戸時代にさかのぼります。
遠州では、天竜川流域の豊富な木材資源と水運により、古くから製材業が発達していました。明治時代、日本に産業革命が起こると、木材加工技術は楽器づくりや工作機械の開発につながっていきます。
また、遠州は古くから綿花の一大産地でした。明治になり、遠州の地で自動織機が開発されると、繊維業が大きく発展します。さらに自動織機の開発ノウハウは、エンジン開発、自動車づくりに活かされ、この地で自動車産業が成長していきます。
この地域には、不可能に見えることでも挑戦する「やらまいか」の風土があると言われています。この地で育った数多くの起業家・発明家・研究者の絶え間ない挑戦が、「ものづくりのまち」の原動力となったのは間違いありません。
Index
天竜川の舟運で繁栄した筏問屋「田代家」
遠州地域の産業発展を支えたのは、天竜川流域の豊富な森林資源と水運でした。1889年、天竜川の支流の気田川沿いに、森林資源を背景として、日本初の木材パルプ工場が建設されました。気多(浜松市天竜区春野町)に残る旧王子製紙製品倉庫[県指定建造物]は往時の姿を残しています。
旧田代家住宅主屋・土蔵[国登録建造物]は、その天竜川舟運の中心的役割を担った「筏(いかだ)問屋」の邸宅です。主屋は天竜川畔の敷地中央に南面して建つ木造二階建てで、良材をふんだんに使った切妻の大型民家は、製材業の繁栄をいまに伝えています。建物内には、天竜川舟運についての貴重な資料も展示されています。
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旧田代家住宅主屋・土蔵[国登録建造物]
住所:静岡県浜松市天竜区二俣町鹿島489
電話:053-925-7006
駐車場:あり
見学所要時間(参考):20分
本田宗一郎のものづくり精神を伝える「旧二俣町役場」
旧二俣町役場[国登録文化財]は、1936年に建てられた木造2階建てで、多数の溝の模様があるスクラッチタイルの概観が印象的な洋風建築です。昭和モダンな洋館は、林業のまちとして発展した往時の姿が偲ばれます。
建物は、旧天竜市役所・公民館・図書館等として利用されてきましたが、現在は「本田宗一郎ものづくり伝承館」となっています。
本田宗一郎は、浜松市天竜区に生まれ、世界的な自動車メーカー「ホンダ」を創業しました。館内には、宗一郎が開発したエンジンやバイク、人となりを紹介するパネルなどが展示され、宗一郎のものづくりの精神を伝えています。
また、旧街道沿いまで足を伸ばせば、大正・昭和初期の建物が残されている古い町並みを楽しむことができます。
Spot Access
旧二俣町役場(現・本田宗一郎ものづくり伝承館)[国登録建造物]
住所:浜松市天竜区二俣町二俣1112
電話:053-477-4664
駐車場:あり
見学所要時間(参考):20分
開業当時の木造扇形車庫が残る「旧遠江二俣駅」
国鉄二俣線(現 天竜浜名湖鉄道)は、1940年に東海道本線の迂回ルートとして開業しました。戦前戦後を通じて、木材輸送などで地域の産業発展に貢献してきましたが、1987年に国鉄から第3セクター路線に転換しています。
天竜浜名湖鉄道には、SL全盛期を伝える事務所棟や休憩室・給水塔などの建物が多数残っています。その一つが、天竜二俣駅(旧遠江二俣駅)の機関車扇形車庫[国登録建造物]です。木造の扇型車庫が現存しているのは、全国でも天竜二俣駅しかありません。日本の鉄道文化を伝える貴重な建造物です。
Spot Access
天竜浜名湖鉄道機関車扇形車庫[国登録建造物]
住所:静岡県浜松市天竜区二俣町阿蔵114-2
電話:053-925-2275
駐車場:あり
見学所要時間(参考):20分
世界初電子式テレビの開発「高柳記念未来技術創造館」
1926年、浜松工業高等学校(現 静岡大学工学部)の助教授だった高柳健次郎は、ブラウン管に「イ」を映し出すことに成功します。それは、世界初の電子式テレビが誕生した瞬間でした。
高柳記念未来技術創造館では、高柳氏の偉業やテレビのしくみ・原理を紹介しています。また、国産第一号のカラーテレビ・白黒テレビ・有機ELテレビ等の貴重なコレクションの展示、浜松市のものづくり企業の技術・製品の紹介も行っています。
テレビ(ディスプレイ)は、現代の情報社会に欠かすことができないデバイスです。高柳氏の偉業は、浜松市・遠州地域の電子産業の原点として、今後ますます評価が高まるに違いありません。
Spot Access
高柳記念未来技術創造館
住所:静岡県浜松市中区城北3丁目5-1(静岡大学浜松キャンパス内)
電話:053-478-1402
駐車場:あり
見学所要時間(参考):30分
ものづくりのまちを支えた金融「旧浜松銀行集会所」
旧浜松銀行集会所[市指定建造物]は、1930年、手形交換・会議の場・銀行家の交流等を目的に建設されました。建物を設計したのは、明治から昭和にかけて、多くの公共建築を手がけた浜松市出身の中村與資平(なかむら よしへい)です。白亜の鉄筋コンクリートと緑色の瓦が鮮やかなコントラストを描く外観と、玄関・階段・壁・飾り金物等の細部にこだわった意匠からは、昭和モダンの息づかいが聞こえます。
現在、この建物は浜松市出身の映画監督「木下恵介記念館」として利用され、木下監督ゆかりの資料等を展示しています。また、設計者の「中村與資平資料室」も併設されています。
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旧浜松銀行集会所[市指定建造物]
住所:静岡県浜松市中区栄町3-1
電話:053-457-3450
駐車場:なし(近隣有料駐車場利用)
見学所要時間(参考):20分
世界のトヨタグループの原点「豊田佐吉記念館」
遠州地域は、天竜川の豊かな水と温暖な気候により、古くから綿花の産地でした。明治時代、綿織物が日本の主力輸出品になると、1884年、天竜二俣に遠州初の洋式紡績工場が設立されます。そして1890年、豊田佐吉が小幅力織機を発明すると綿織物の生産性は飛躍的に高まり、遠州の繊維業は大きく発展しました。
豊田佐吉記念館は、その豊田佐吉の生家です。佐吉は、1926年に豊田自動織機製作所(トヨタ自動車の前身)を設立し、世界最高水準の自動織機を開発します。そのノウハウはエンジン開発や自動車づくり、さらには日本の自動車産業の礎となりました。
記念館には、佐吉が発明した織機、佐吉の生涯を紹介するパネル等が展示されています。
Spot Access
豊田佐吉記念館
住所:静岡県湖西市山口113-2
電話:053-576-0064
駐車場:あり
見学所要時間(参考):20分
甘みが強くてしっとり!「うなぎいも」スイーツ。
「うなぎいも(しずおか食セレクション)」は、浜松特産のうなぎの骨や頭などを肥料に栽培したサツマイモです。甘みが強くてしっとりとした食感を活かして、「うなぎいもぷりん」「うなぎいもクッキーサンド」「蜜っとりスイートポテト」などスイーツ商品が開発され、人気を集めています。
写真:左から「うなぎいもプリン」「うなぎいもどら焼き」「うなもっち」
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うなぎいもストア 浜松駅店
住所/静岡県浜松市中区砂山町6-1 メイワン ウエスト
遠州織物の聖地「初生衣(うぶぎぬ)神社」
古くから、遠州は織物が盛んな地域でした。遠州織物の聖地、初生衣(うぶぎぬ)神社には七夕の伝説で知られる織姫(天棚機姫命(あめのたなばたひめのみこと))が祀られています。そして境内の織殿[市指定有形民俗文化財]には、800年前に御衣(おんぞ)を織っていたものと同じ形の織機があります。
神社では、平安時代から730年間にわたり、伊勢神宮に御衣を奉献してきました。この神事は、明治時代に一度中断されましたが、1968年に地域の繊維関連者が復興し、毎年4月第2土曜に「おんぞ祭り」を開催しています。
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初生衣神社織殿[市指定有形民俗文化財]
住所:静岡県浜松市北区三ヶ日町岡本696
電話:053-525-1835
駐車場:あり
拝観所要時間(参考):20分
今回のモデルコース
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愛称「レガシズ」は、英語の「レガシー(legacy=遺産・財産・受け継いだもの)」と、静岡県の「シズ」から付けられました。
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