• Instagram
  • Youtube
  • X

レガシズ レガシズ

文化財を楽しむ

西部 Volume.07

秋葉街道と塩の道

しずおか遺産「秋葉信仰と街道」から

古来より、日本人は山に神々が宿ると信じていました。
富士山をはじめとする各地の霊山は、山岳信仰の地となっていました。天竜川の上流、南アルプスの南端にある標高866mの山、秋葉山もその一つです。鎌倉から戦国にかけて、山岳修験の霊場だったこの地には、「武運長久」の利益を求めた多くの武士の信仰を集めました。
江戸時代、天下太平の世になると、秋葉山は「火防(ひぶせ)の神」として、人々の信仰を集めるようになります。とくに、幾度となく大火を経験した江戸の人たちからは、その利益を求めて多くの人が参詣に訪れました。
参詣者が秋葉山へ向かう道は「秋葉街道」と呼ばれ、街道沿いには参詣者の便を図る常夜灯「秋葉灯篭」が建てられました。秋葉街道には浜松宿、掛川宿、奥三河、南信州などを起点とする複数のルートがあり、「秋葉街道」はそれらの総称です。これらの道は古くからの道が母体となっており、そのうちの一つが、遠州灘の相良(さがら)でとれた塩を信州の塩尻まで運ぶ「塩の道」でした。
つまり、秋葉街道は、秋葉山へ続く「信仰の道」であり、暮らしに欠かせない「交易の道」でもありました。秋葉街道(塩の道)をたどりながら、そこに息づく伝統・文化を訪ねます。

参考
しずおか遺産「秋葉信仰と街道」
動画を見る

01

塩の道の起点、相良城の本丸跡「牧之原市史料館」

塩の道の起点は、江戸幕府老中の田沼意次(たぬま おきつぐ)の居城、相良城(さがらじょう)です。塩の道は、相良の塩を信州まで運ぶ道であるとともに、海上物流の拠点「相良港」とつながる道でした。
現在、相良城の本丸跡には牧之原市史料館[国・県指定文化財所蔵]があり、田沼家の資料、飯室乃神社(いいむろのじんじゃ)の鰐口(わにぐち)[県指定工芸品]などの貴重な文化財が所蔵されています。
その中の一つに、大江八幡宮の菱垣廻船(ひがきかいせん)・樽廻船(模型)[県指定有形民俗文化財]があります。菱垣廻船・樽廻船は、江戸時代に大坂と江戸を結んだ船便で、相良港にも入港しました。これに因んで、大江八幡神社の御船行事[国指定無形民俗文化財]・飯津佐和乃神社(はづさわのじんじゃ)の御船行事[国指定無形民俗文化財]では、菱垣廻船・樽廻船の模型を担ぎ、舟唄に合わせて練り歩きます。

02

掛川宿、秋葉街道の入口「秋葉神社掛川遥斎所」

塩の道は相良から掛川宿へ続き、旧東海道と交わります。市内に地名として残る「塩町」は、かつて塩問屋が軒を連ねていた名残です。
掛川宿から秋葉山へ向かう塩の道は、秋葉街道となります。江戸時代、旧東海道と秋葉街道が分岐した掛川市大池には、常夜灯(秋葉灯篭)2基と青銅製鳥居が建ち、秋葉街道の入口となっていました。しかし1854年の安政東海地震で常夜灯と鳥居は倒壊し、いまは残っていません。
現在は、ここに秋葉神社掛川遥斎所(ようさいじょ)の社殿があり、遠く秋葉神社を遥拝する場所となっています。

Spot Access

秋葉神社掛川遥斎所
住所:静岡県掛川市大池355-3
電話:0537-21-1121(掛川市観光交流課 観光交流係)
駐車場:あり
拝観所要時間(参考):10分

03

遠州天狗の総帥、三尺坊大権現が遷座した「可睡斎」

可睡斎(かすいさい)[県指定文化財有]の寺名は、家康の教育係だった11代目の住職が、浜松城主になった家康と再会した際、居眠りをしてしまい、「可睡和尚」と呼ばれたことに由来します。
1868年、明治政府から神仏分離令(神社と寺院を明確に区別すること)が発せられると、秋葉神社の三尺坊大権現(さんしゃくぼうだいごんげん)は、仏教寺院の可睡斎に遷座することになりました。
三尺坊大権現は火防(ひぶせ)の神通力をもつ天狗の化身で、遠州天狗の総帥です。このことから、本堂への階段の両脇には天狗像が建ち、拝殿には多数の天狗の面が飾られています。
また可睡斎の境内には、日露戦争の戦没者を慰霊する護国塔[県指定建造物]、室町時代に鋳造された梵鐘(ぼんしょう)[県指定工芸品]などがあります。
また、「可睡斎ひな祭り」「ぼたん燦燦まつり」「風鈴まつり」「紅葉ご利益巡り」など、年間通して多くの行事を開催しています。

Spot Access

可睡斎[県指定文化財有]
住所:静岡県袋井市久能2915-1
電話:0538-42-2121
駐車場:あり
拝観所要時間(参考):30分

04

遠州の小京都、森町の遠江一宮「小國神社」

「遠州の小京都」とうたわれた森町は、秋葉街道の宿場として栄えてきました。三方を囲む緑の山々、町の中心をうるおす太田川の清流、日本情緒あふれる蔵の町並みは、どこか京都の風景を想起させます。
森町には歴史・由緒ある寺社仏閣も多く、その一つが遠江国一宮、小國神社[国指定民俗文化財伝承]です。樹齢数百年の老杉がそびえる「古代の森」に囲まれた境内は清浄な空気に包まれ、そこに荘厳な大社造りの本殿が建ちます。
小國神社は創建555年とも伝えられる、長い歴史のある神社です。小國神社の舞楽[国指定無形民俗文化財]、小國神社の田遊び[県指定無形民俗文化財]など、神社の祭事は森町の伝統文化に深く根を下ろしています。
また、5月下旬から6月中旬には約8万本の花菖蒲、11月下旬から12月初旬には境内の宮川沿いの約1000本の紅葉が楽しめます。

05

巨大な鉄製の火箸を奉納「秋葉神社遥斎殿(下社)」

秋葉山本宮秋葉神社は、全国に400社以上ある秋葉神社の総本宮です。山頂に上社、山麓に下社という二つの社を持ちます。下社の正式名は「秋葉神社遥斎殿」と言い、切妻造りの社殿は戦時中の1943年に建立されたものです。
秋葉神社の祭神が、火の神「火之迦具土大神(ひのかぐつちのおおかみ)」であることから、鉄鋼関連者の参詣が多く、社殿の横に巨大な鉄製の「火箸」と「十能(炭を運ぶ道具)」が納められています。
門前は気田川(けたがわ)の河川敷で、川遊びやキャンプ、鮎釣りの名所になっており、休日にはアウトドアレジャーを楽しむ人でにぎわいます。

Spot Access

秋葉神社遥斎殿(下社)
住所:静岡県浜松市天竜区春野町領家328ー1
電話:053-985-0111(上社)
駐車場:あり
拝観所要時間:20分

06

標高866m、天空の神社「秋葉山本宮秋葉神社」

秋葉山本宮秋葉神社(上社)[国指定工芸品所蔵]は、1300年以上前、709年に元明天皇の命で社殿が建てられたと伝えられています。明治政府の神仏分離令の前までは、神社(秋葉社)と寺院(秋葉寺)が同じ境内にありました。
鎌倉から戦国にかけて、秋葉山は「武運長久(武士の命が長く続くこと)」の利益を求めて、武田信玄、豊臣秀吉、加藤清正など多くの武将から崇敬されました。社殿には奉納された名刀、銘安縄(めいやすなわ)・銘弘次・銘来国光[国指定工芸品]等が納められています。
江戸時代、秋葉山は「火防の神」として人気を集め、各地からの参詣客で賑わうようになりました。
秋葉神社(上社)は、標高866mの山頂にあります。参道のスギの巨木に囲まれた秋葉神社神門[市指定建造物]をくぐり、境内に登ると、はるか遠州灘を望むことができます。

ここでひといき Tea Break

古代の森を散策した後に、「小國ことまち横丁」

小國神社の鳥居横に、8つの店舗が軒を連ねた「小國ことまち横丁」があり、老舗茶問屋がプロデュースしたお団子やわらび餅、抹茶スイーツのほか、蜂蜜をつかったりんご飴が大人気。
また、森町が深蒸し茶の一大産地であることから、お茶の詰め放題も人気です。
横丁には和風カフェもあり、食事やスイーツが楽しめ、小國神社の参拝客でにぎわっています。

Spot Access

小國ことまち横丁
住所:静岡県周智郡森町一宮3956-1(小國神社鳥居横)

足をのばして And More

下社から上社へ。秋葉街道を歩く「東海自然歩道」

秋葉神社の下社から上社までの約4.8kmは、東海自然歩道「秋葉コース」の一部になっています。
ハイキングコースの途中には、九里橋、秋葉灯篭、富士見茶屋跡、信玄岩、秋葉寺などがあり、秋葉山の歴史文化を感じることができます。この秋葉寺は、明治政府による秋葉山の神仏分離後、1880年に再建されたものです。
下社から上社までの所要時間は、約2時間。江戸時代の秋葉詣の気分を味わいながら、また秋葉山の豊かな自然を楽しみながら、マイペースで歩いてください。

Spot Access

東海自然歩道(秋葉神社の下社から上社)
住所:静岡県浜松市天竜区春野町領家
電話:053-925-5845(天竜区観光協会)
駐車場:あり(秋葉神社前キャンプ場 利用)
散策所要時間:下社⇔上社 往復4時間

今回のモデルケース

今回のモデルコース

東名高速道路 相良牧之原IC
車で20分
01 牧之原市史料館
見学所要時間(参考)/20分
車で45分
02 秋葉神社掛川遥斎所
見学所要時間(参考)/10分
車で20分
03 可睡斎
見学所要時間(参考)/60分
車で20分
04 小國神社
見学所要時間(参考)/45分
車で60分
06 秋葉山本宮秋葉神社
見学所要時間(参考)/30分
車で50分
新東名高速道路 浜松浜北IC
散策途中
Tourism Association この地域の観光協会

牧之原市観光案内
Tel. 0548-22-5600 [営業時間]8:15-17:00・平日のみ(年末年始休館)

掛川観光協会
Tel.0537-24-8711 [営業時間]9:00-17:00

袋井市観光協会
Tel.0538-43-1006 [営業時間]9:30-18:00・年中無休(12/29-1/3のみ休館)

森町観光協会
Tel.0538-85-6316

浜松・浜名湖ツーリズムビューロー
Tel.053-452-1634 [営業時間]9:00-19:00・年中無休

レガシズ

当サイトは、静岡県の文化財の様々な情報を発信するポータルサイトです。
愛称「レガシズ」は、英語の「レガシー(legacy=遺産・財産・受け継いだもの)」と、静岡県の「シズ」から付けられました。
ロゴマークについて