文豪たちの伊豆
しずおか遺産「文学の聖地『伊豆』と温泉」から
陽光にきらめく清流、深緑をたたえた山々、まちを包む湯の香り。伊豆の情景は、坪内逍遙、夏目漱石、芥川龍之介、太宰治、三島由紀夫、井伏鱒二など、多くの文豪たちに愛されてきました。伊豆を舞台にした名作も多く、なかでも川端康成の「伊豆の踊子」と井上靖の「しろばんば」は有名です。
「伊豆の踊子」は、川端康成が伊豆を旅した19歳の時の体験を元に書かれました。修善寺、湯ヶ島、天城峠、湯ヶ野などが小説の舞台となっています。
「しろばんば」は、井上靖の幼少期を描いた自伝的な小説です。湯ヶ島の豊かな自然のなかで成長していく、多感な少年の姿をいきいきと描いています。
川端康成と井上靖。二人の文豪の足跡を訪ねながら、主人公の目から小説世界を旅するのも良いかもしれません。
Index
小説しろばんばの舞台「上の家(かみのいえ)」
井上靖の母の実家です。小説「しろばんば」の「上の家」として登場します。湯ヶ島のまちには、しろばんばの舞台になった場所が数多く残っています。
主人公の洪作少年(=井上靖)が通っていた旧湯ヶ島小学校の跡地には、市民活動センターが建てられています。2階の「井上靖資料室」では、しろばんばの関連資料が展示されています。
上の家には、井上の祖父の囲碁仲間だった川端康成も訪れたそうです。川端は、湯ヶ島の温泉旅館「湯本館」に逗留し、「伊豆の踊子」の原稿を執筆しています。小説には、この宿の階段から踊子を眺める姿が描かれています。
Spot Access
上の家
住所:静岡県伊豆市湯ケ島189
電話:0558-85-1056(伊豆市観光協会天城支部)
駐車場:あり(天城会館より徒歩3分)
見学所要時間(参考):20分
文学の香りただよう踊子歩道の起終点「浄蓮の滝」
高さ25m・幅7m、伊豆を代表する大滝です。玄武岩の断崖にハイコモチシダ[県指定天然記念物]が群生し、清流沿いにはわさび田が広がっています。
浄蓮の滝の入口は、主人公と踊子の「伊豆の踊子像」が立っています。この踊子像から旧天城トンネルを経由して湯ヶ野温泉へ続く18.5kmのハイキングコースが「踊子歩道」です。
木谷川、河津川という二つの清流沿いに続く歩道には、井上靖、島崎藤村、横山利一等の文学碑などがあり、日本近代文学の香りを楽しむことができます。
Spot Access
浄蓮の滝[県指定天然記念物有]
住所:静岡県伊豆市湯ケ島892-14
電話:0558-85-1125(浄蓮の滝観光センター)
駐車場:あり
見学所要時間(参考):60分
伊豆に縁の深い作家の資料を展示「伊豆近代文学博物館」
国道414号沿いの「道の駅天城越え」にある昭和の森会館内の伊豆近代文学博物館には、川端康成の「伊豆の踊子」の生原稿、井上靖の少年時代の通信簿など、伊豆に縁の深い日本近代文学作家120名の資料が展示されています。
博物館の隣には、「しろばんば」に登場する井上靖旧邸の母家が移築されています。薬窓など医者の家らしい造りになっており、見学もできます。
Spot Access
伊豆近代文学博物館(昭和の森会館)
住所:静岡県伊豆市湯ケ島892-6 昭和の森会館内
電話:0558-85-1110(昭和の森会館)
駐車場:あり(道の駅「天城越え」)
見学所要時間(参考):30分
井上靖の処女作に描かれた「天城の太郎スギ」
新聞記者だった井上靖は、処女作「猟銃」で文壇にデビューしました。その舞台となったのが、安山岩の上を流れる清流が岩肌を削り、滑らかで美しい一枚岩をつくる滑沢渓谷(なめさわけいこく)です。
滑沢橋を渡り、林道入口の井上靖文学碑を通り、苔と樹木に包まれた渓谷沿いの歩道を上流へ進むと、「猟銃」に登場する天然記念物の天城の太郎スギ[県指定天然記念物]がそびえています。高さ40mという天城山中一の巨木は、樹齢約450年以上と推定されています。
Spot Access
天城の太郎スギ[県指定天然記念物]
住所:静岡県伊豆市湯ヶ島892-2
電話:0558-85-1056(伊豆市観光協会天城支部)
駐車場:なし(昭和の森会館駐車場より徒歩30分)
見学所要時間(参考):15分
「私」と踊子が再会した「旧天城トンネル(天城山隧道)」
天城山隧道(あまぎさんずいどう)[国指定建造物]は、明治時代、1905年に通行が開始された全長446mの石積のトンネルです。伊豆の踊子には、「暗いトンネルに入ると、冷たい雫がぽたぽた落ちていた。南伊豆への出口が前方に小さく明るんでいた。」と描かれています。このトンネルを抜けて、主人公の「私」は踊子一行と再会して、一緒に旅することになります。
しろばんばにも、洪作少年が遊び仲間と一緒に「ずいどう(旧天城トンネル)」を見学に行く場面が登場します。
Spot Access
天城山隧道[国指定有形文化財]
住所:静岡県伊豆市湯ケ島字桐山
電話:0558-85-1056(伊豆市観光協会天城支部)
駐車場:なし(水生地下駐車場より徒歩30分・二階滝駐車場より徒歩35分)
見学所要時間(参考):20分
わさび収穫体験もできる「天然わさびの里」
伊豆地域は世界農業遺産「静岡水わさび」の産地であり、天城山中の清流沿いには鮮やかな緑のわさび田が広がります。天然わさびの里は、道の駅「天城越え」のなかにある生産者直営のわさび店です。
わさび漬け、わさびのり、わさびソフトなどの天城わさびの魅力を活かした商品が揃っています。また、わさび漬け体験やわさび収穫体験もできます。
Spot Access
天然わさびの里
住所/静岡県伊豆市湯ヶ島892-6(道の駅「天城越え」内)
文豪たちが逗留した温泉のまち「熱海」
温泉地の熱海は多くの文豪たちに愛され、長期間逗留したまちです。
起雲閣[市指定建造物]の別館では、太宰治が名作「人間失格」を執筆しました。起雲閣の展示室には、この太宰をはじめ、三島由紀夫、尾崎紅葉、舟橋聖一、武田泰淳などの資料が展示されています。
坪内逍遥も熱海を愛した文豪の一人です。晩年を来宮神社近くの邸宅「双柿舎(そうししゃ)」で過ごした坪内は、来宮神社の大クス[国指定天然記念物]から「役の行者」の着想を得たとされています。
Spot Access
起雲閣[市指定建造物]
住所:静岡県熱海市昭和町4-2
電話:0557-86-3101
駐車場:あり
今回のモデルコース
当サイトは、静岡県の文化財の様々な情報を発信するポータルサイトです。
愛称「レガシズ」は、英語の「レガシー(legacy=遺産・財産・受け継いだもの)」と、静岡県の「シズ」から付けられました。
ロゴマークについて