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文化財を楽しむ

伊豆 Volume.03

文明開化への槌音

欧米の文化や技術を取り入れ、近代国家へ

明治時代になると、積極的に西洋文明を取り入れ近代化する「文明開化」の時代を迎えますが、その槌音は幕末からうかがうことができます。背景にあったのは、列強諸国に侵略されるインドや中国、東南アジアの国々の姿でした。日本が列強の植民地にならないためには、欧米の文化や技術を積極的に取れ入れ、短期間で近代国家になることが必要だと考えたのです。
伊豆地域でも、その機運が高まっていました。その一つが、大砲の鋳造に欠かせない鉄を精製するために造られた「韮山反射炉」です。世界文化遺産にもなっている韮山反射炉が完成したのは、ペリー来航からわずか4年後の1957年。「殖産興業」「富国強兵」のスローガンを先取りした、日本近代化のパイオニアとも言うべき、幕末の産業施設です。
明治になると、全国各地に文明開化の槌音は響き渡ります。列強の植民地になることなく独立国家であり続けるために近代化を進めた、幕末・明治の先人たちの足跡をたどります。

01

江戸湾を守る大砲鋳造のために建設「韮山反射炉」

韮山代官の江川英龍(えがわ ひでたつ)は、米国のペリー艦隊の来航後、江戸湾防備のために大砲を設置する御台場と大砲を製造するための鋳造炉の建設を、幕府に進言しました。
鋳造炉はアーチ形の天井に熱を反射させて鉄を溶解する「反射炉」で、建設には千数百度の高温に耐えられるレンガが必要でした。英龍は日本初の耐熱レンガの製造に成功し、1857年に反射炉が完成させました。
韮山反射炉[国指定史跡]は、2015年に「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として世界文化遺産に登録されました。併設のガイダンスセンターには、反射炉築造の時代背景や遺物等が展示され、韮山反射炉の歴史を知ることができます。

Spot Access

韮山反射炉[国指定文化財]
住所:静岡県伊豆の国市中260-1
電話:055-949-3450(韮山反射炉ガイダンスセンター)
駐車場:あり
営業時間:9:00~17:00(3月~9月)、9:00~16:30(10月~2月)
定休日:第3水曜日・年末年始
入場料:一般・高校生以上500円(800円)、小中学生50円(250円) ※()内は江川邸と共通券
見学所要時間(参考):30分

02

幕末の偉人、江川英龍の生家「江川家住宅」

江川家住宅[国指定建造物]は、江戸時代の韮山の世襲代官だった江川家の屋敷です。韮山役所跡[国指定史跡]のなかにあり、主屋・書院・仏間・東蔵・肥料蔵・武器庫・表門などが、国の重要文化財に指定されています。
幕末の江川家当主、江川英龍は優れた科学者・技術者・教育者でした。彼は、韮山反射炉やお台場の建設、洋式帆船建造、種痘の実施、パンの製造、青少年の教育などに数多くの業績を残し、伊豆はもとより、日本の「文明開化」に多大な影響を与えました。

Spot Access

江川家住宅 [国指定有形文化財]
住所:静岡県伊豆の国市韮山韮山1
電話:055-940-2200
駐車場:あり
営業時間:9:00~16:30、 9:30~15:00(水曜日)
定休日:第3水曜日・年末年始
入場料:一般・高校生以上650円(800円)、小中学生300円(250円) ※()内は韮山反射炉と共通券
見学所要時間(参考):60分

03

日本初の洋式帆船の建造の地「戸田造船郷土資料博物館」

1854年、ロシアのプチャーチン提督はディアナ号で開港した下田に入港しますが、大地震による津波で船は沈没してしまいます。
ロシア帰還のために、ロシア人乗組員と戸田村(沼津市)の船大工等は協力して、日本初の本格的洋式帆船「ヘダ号」を建造します。これが、近代日本の造船技術の礎ともなりました。
戸田造船郷土資料博物館[県指定史跡有]には、当時の洋式船建造技術を伝える収蔵品や沈没したディアナ号の錨[市指定有形文化財]なども展示されています。
また博物館には「駿河湾深海生物館」も併設され、駿河湾の深海魚について学ぶことができます。

Spot Access

戸田造船郷土資料博物館[県指定史跡有]
住所:静岡県沼津市戸田2710-1
電話:0558-94-2384
駐車場:あり
営業時間:9:00~16:30
定休日:水曜日
入場料:大人200円、小中学生100円
見学所要時間(参考):40分

04

文明開化の息吹を伝える、擬洋風建築「松城家住宅」

明治維新後、急速な近代化をめざす日本は欧米の文化や技術を貪欲に取り入れます。文明開化の時代、伝統的な建築技術を身につけた大工棟梁たちは「見よう見まね」で、伝統技術を使い、欧米風の意匠を取り入れた「擬洋風建築(ぎようふうけんちく)」に挑戦します。松城家住宅[国指定建造物]は、そんな文明開化の息吹を今に伝える明治初期の擬洋風建築です。白漆喰塗の外壁などは、左官の入江長八一門の手によるもので、芸術作品としても見応えがあります。

Spot Access

松城家住宅[国指定建造物]
住所:静岡県沼津市戸田72
電話:0558-94-3115(戸田観光協会)
駐車場:あり
営業時間:9:00~16:30
定休日:水曜日、年末年始
入場料:大人300円、小中学生100円
見学所要時間(参考):40分

05

江原素六の偉業を偲ぶ「沼津市明治史料館」

沼津市明治史料館は別名「江原素六記念館」とも呼ばれ、明治時代の教育者・実業家・政治家だった江原素六(えばら そろく)の資料を展示しています。
素六は、近代的な陸軍将校の育成をめざした沼津兵学校をつくり、優秀な人材を育てました。兵学校が東京に移転した後も沼津に残り、沼津中学校や駿東高等女学校を設立するなど、地域の教育に尽力しました。また愛鷹山で西洋式の牧畜事業をはじめ、牛乳やバター、チーズ、羊毛を生産するなど、実業家としても活躍。晩年は、政治家として地域の発展に貢献しています。

Spot Access

沼津市明治史料館
住所:静岡県沼津市西熊堂372-1
電話:055-923-3335
駐車場:あり
営業時間:9:00~16:30
定休日:月曜日、年末年始
入場料:大人200円、小中学生100円
見学所要時間(参考):40分

ここでひといき Tea Break

伊豆韮山のクラフトビール「反射炉ビヤ」

反射炉ビヤは、伊豆韮山の醸造所でつくられたクラフトビールです。伊豆地域に縁のある人物にちなんで、イングリッシュペールエールのビールに江川家の当主名「太郎左衛門」、黒ビールに「頼朝」、アメリカンペールエールのビールには「早雲」の名がつけられています。
韮山反射炉の隣には「反射炉ビヤレストランほむら」があり、クラフトビールと炭火焼き料理を楽しむことができます。またレストランに隣接した「反射炉物産館たんなん」では、クラフトビール「反射炉ビヤ」を販売しています。

Spot Access

反射炉ビヤ
住所/静岡県伊豆の国市中272-1(反射炉ビヤレストランほむら)

足をのばして And More

明治時代の宮廷文化に包まれる空間「沼津御用邸」

沼津御用邸は、1893年に大正天皇(当時は皇太子)の静養のために建設されました。本邸は沼津空襲により焼失してしまいましたが、西邸・東邸は明治時代の宮廷建築をいまに伝え、当時の皇族方の暮らしの息づかいを感じることができます。
現在、沼津御用邸の広大な敷地は「沼津御用邸記念公園」として整備され、人々の憩いの場になっています。旧沼津御用邸苑地[国指定名勝]は、国指定名勝で、クロマツ林の海浜から富士山・牛臥山(うしぶせやま)を望む景観は、富士山の絶景スポットの一つです。

Spot Access

沼津御用邸
住所:静岡県沼津市下香貫島郷2802-1
電話:055-931-0005
駐車場:あり
営業時間:9:00~16:30
定休日:年末年始
入場料:大人410円(100円)、小中学生200円(50円) ※()内は公園のみ
見学所要時間(参考):60分

今回のモデルケース

今回のモデルコース

JR沼津駅
車で15分
05 沼津市明治史料館
見学所要時間(参考)/30分
車で40分
03 戸田造船郷土資料博物館
見学所要時間(参考)/40分
車で10分
04 松城家住宅
見学所要時間(参考)/40分
車で60分
01 韮山反射炉
見学所要時間(参考)/30分
車で10分
02 江川家住宅
見学所要時間(参考)/60分
車で30分
JR三島駅
散策途中
Tourism Association この地域の観光協会

伊豆の国市観光協会
Tel.055-948-0304 [営業時間]10:00-16:00

沼津観光協会
Tel.055-964-1300

レガシズ

当サイトは、静岡県の文化財の様々な情報を発信するポータルサイトです。
愛称「レガシズ」は、英語の「レガシー(legacy=遺産・財産・受け継いだもの)」と、静岡県の「シズ」から付けられました。
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