武家政権の夢
頼朝が源氏再興の力を蓄えた、20年間を訪ねて
平安時代の末期、「平家にあらずんば人にあらず」とおごるほどに、平氏は隆盛を極めていました。
1159年、13歳の源頼朝は父の義朝とともに平氏から政権を奪おうと「平治の乱」を起こしますが、平清盛に敗れて伊豆の蛭ヶ小島(ひるがこじま)に流されてしまいます。
そして、この伊豆の地で、頼朝は東国の有力武士たちとの連携を深め、再起のための力を蓄えていきます。なかでも、地方の豪族である北条時政の娘、政子との結婚は頼朝にとって大きな転換点でした。源氏再興に向けて、北条家という後ろ盾を得ることができたからです。
1180年、34歳の頼朝のもとに、以仁王(もちひとおう)が発した平家打倒の令旨が届きます。これに呼応して、頼朝は伊豆国目代の山木兼隆(やまき かねたか)を打ち、反平氏の旗を鮮明にします。それから4年、1184年の壇ノ浦の戦いで平氏を倒すと、日本初の武家政権「鎌倉幕府」を開きます。
伊豆は、頼朝が20年間にわたって、源氏再興の夢を果たすための力を育んだ地。その足跡を訪ねると、少年から青年、壮年へと成長していく頼朝の姿が浮かんできます。
Index
14歳の頼朝が配流された場所「蛭ヶ島公園」
平治の乱により、父の義朝が亡くなった後、14歳の頼朝は蛭ヶ小島(ひるがこじま)に配流されました。当時の蛭ヶ小島は、狩野川の中州のような島だったと言われています。現在、蛭ヶ島公園として整備され、園内に源頼朝と北条政子の像が立っています。
公園に隣接して、18世紀中ごろに建てられた旧上野家住宅[県指定建造物]があります。旧上野家住宅は市歴史民俗資料館として利用され、郷土の歴史資料が展示されています。
Spot Access
蛭ケ島公園[県指定建造物有]
住所:静岡県伊豆の国市四日町15
電話:055-948-2909(伊豆の国市 都市計画課)
駐車場:あり
見学所要時間(参考):10分
政子が生まれた伊豆北条氏の屋敷跡「北条氏邸跡」
北条氏は、桓武平氏の流れを汲むとされる伊豆国の有力豪族でした。北条時政は頼朝の監視役の一人でしたが、娘の政子と頼朝が結婚したことで頼朝の後ろ盾となります。
頼朝の平家討伐に力を尽くした北条氏は、鎌倉幕府が開かれると本拠地を鎌倉に移し、執権として幕府の実権を握るようになります。
北条氏邸跡[国指定史跡]は北条氏の屋敷跡です。1992年の発掘調査で北条氏の館跡と北条氏滅亡後の円成寺跡が大量の出土品とともに発見され、国指定史跡に指定されました。北条氏邸跡の東側には、政子の産湯の水をとったと伝えられる井戸が残っています。
Spot Access
北条氏邸跡[国指定史跡]
住所:静岡県伊豆の国市寺家13
電話:055-948-1428(伊豆の国市 文化財課)
駐車場:あり(守山西公園) ※車利用の場合はこの駐車場を起点に散策が便利
見学所要時間(参考):10分
頼朝が平家追討の挙兵を決意した「守山八幡宮」
源氏の守護神である「八幡神(やはたのかみ)」を祀る神社です。頼朝が以仁王の令旨を開封する前に、守山八幡宮を遙拜したと伝えられています。参道の急な石段を上ると、1597年に韮山城主内藤信成が造営した本殿があります。
境内には「史蹟 源頼朝挙兵之碑」と刻まれた石碑があり、碑文には「頼朝が八幡宮に平家追討を祈願した後に挙兵し、鎌倉幕府の礎を築いた」ことが記されています。
山頂には展望台があり、北条氏が支配した地を一望できます。
Spot Access
守山八幡宮
住所:静岡県伊豆の国市寺家1204-1
駐車場:あり(守山西公園利用)
拝観所要時間(参考):10分
悲恋に身を割かれた八重姫をまつる「眞珠院」
政子と結ばれる前、頼朝は伊東祐親(いとう すけちか)の娘の八重姫と恋仲になり、二人の間には男の子が生まれました。しかし、平家との関係悪化を恐れた父の祐親は激怒して三歳の孫を殺害し、八重姫は幽閉されてしまいます。しばらく後、八重姫は頼朝が政子と結婚したことを知ると悲しみ、眞珠院(しんじゅいん)の正面の真珠ヶ淵に身を投げてしまったと伝えられています。眞珠院には、悲恋に身を割かれた八重姫がまつられています。また、境内の五輪塔は市指定文化財となっています。
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眞珠院[市指定文化財有]
住所:静岡県伊豆の国市中條2
電話:055-949-3544
駐車場:あり(守山西公園利用)
見学所要時間(参考):10分
時政が奥州合戦の頼朝勝利を願った「願成就院」
1189年、頼朝は義経をかくまった奥州藤原氏の討伐に向かいます。その戦勝を祈願して義父の時政が建立したのが、願成就院[国指定有形文化財・国宝所蔵]です。奥州合戦により源平争乱の時代は終わり、鎌倉幕府が開かれます。北条氏は執権として政治の実権を握ることとなります。
その後、願成就院は北条氏一族の手で堂塔伽藍等が整備され、伊豆一の寺院になりますが、戦国の戦火にあって焼失してしまいます。現在の本堂は、江戸時代に建てられたものです。
幸運にも戦火を免れた仏像のなかには、運慶作の阿弥陀如来座像、不動明王三尊像、毘沙門天立像の5体がありました。どれも大変に貴重な仏像であり、すべて国宝に指定されています。
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願成就院[国指定有形文化財・国宝所蔵]
住所:静岡県伊豆の国市寺家83-1
電話:055-949-7676
駐車場:あり
参拝時間:10:00~16:00
定休日:火曜・水曜
拝観料:大人700円、中高生400円、小学生200円
拝観所要時間(参考):45分
頼朝と政子が、源氏再興を祈願した「三嶋大社」
三嶋大社(本殿・弊殿・拝殿)[国指定建造物]は、伊豆国で社格が最も高い一宮であり、頼朝をはじめ、多くの武士からの崇敬を集めた神社です。境内には、頼朝が源氏再興を祈願して百日参りをした時に休息した「腰掛石」があり、その時に部下の安達盛長(あだち もりなが)が警護したとされる場所に「相生松」が植えられています。
また宝物館には、政子が奉納と伝えられる国宝梅蒔絵手箱[国指定工芸品]、鎌倉時代の古文書頼朝文書[国指定古文書]等が残されています。
Spot Access
三嶋大社[国指定建造物等]
住所:静岡県三島市大宮町2-1-5
電話:055-975-0172
駐車場:あり
参拝時間:8:30~16:00(平日)、8:30~16:30(土日)
宝物館入館料:一般500円、大学生・高校生400円、中学生・小学生300円
拝観所要時間(参考):45分
北条の里の近くで、評判のスイーツを。
北条氏邸跡から車で7分。いちご街道沿いの洋菓子店「冨久家エマーユ」のイタリアンロールは、地元はもちろん全国にも知られる、評判のスイーツ。イタリアンロールの由来は、ケーキの焼き色がイタリア産の大理石に似ているからだそうです。栗、抹茶、イチゴなど種類もいろいろ。手づくりならではの細やかで深い味わいをお楽しみください。
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冨久家エマーユ
住所/静岡県伊豆の国市南江間1387-4
頼朝が政子との忍び逢いの場「伊豆山神社」
父の時政に結婚を猛反対された政子が頼朝と忍び逢い、結ばれた地と伝えられています。その伝承から「縁結びの神社」としても有名です。伊豆山浜から本殿に続く837段の石段を上ると、熱海市街と相模灘が一望できます。境内には、三嶋大社と同じく、頼朝と政子が座ったとされる「腰掛石」があります。
伊豆山浜には日本本三大古泉の一つ走り湯[市指定文化財]があり、伊豆山神社の神湯として信仰されていました。頼朝が入浴したとも伝えられ、孫の実朝が歌に詠むなど源氏との関わりの深い温泉です。
Spot Access
伊豆山神社
住所:静岡県熱海市伊豆山708-1
電話:0557-80-3164
駐車場:あり
拝観時間:9:00~16:30
今回のモデルコース
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愛称「レガシズ」は、英語の「レガシー(legacy=遺産・財産・受け継いだもの)」と、静岡県の「シズ」から付けられました。
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