伊豆南部の仏像
伊豆半島南部の中で、東岸の河津町にある南禅寺と西岸の松崎町にある吉田寺に伝わる諸像を紹介します。
重要文化財である「南禅寺伝来諸像」は、河津町の海岸から2kmほどに位置する南禅寺堂に伝えられてきた26体の諸像で、現在は境内に設けられた展示館で保存、公開されています。大半は平安時代に位置づけられ、さらに、十一面観音立像は奈良時代にさかのぼると評価されています。この地で多く造像された背景として、海岸や海路から望める伊豆諸島の火山活動に対応した可能性も指摘されています。また、痛みのはげしい像が多いのは、土砂崩れで寺院とともに谷に埋没してしまい、後に掘り起こされたものとされています。26体以外の断片もあります。
松崎町の吉田寺の仏像は、下田市にある上原美術館に寄託されています。鎌倉時代前半の慶派の特色を示す仏像群ですが、脇侍の観音菩薩と地蔵菩薩の組合せは珍しい例です。吉田寺については、北条政子が子の源頼家の菩薩を弔うために七仏を造らせ創建したという伝えもあります。